新・しるもの日記(6) 友田とん

2020年5月4日〜5月10日

5月4日(月)

 「灯台より」増刊号vo.2の著者献PDFが届いたので早速印刷し、夢中になって読む。出荷などの後、溜まっていた日記を書き足す。午後は『パリ闊』4枚。マッターホーンにダミエを買いに行き、実家に送る。口が醤油の甘しょっぱいものを欲していることに気づき、夜はすき焼きを作った。味噌汁は大根と油揚げ。したがって、讃岐白味噌多め。

 後藤明生『小説は何処から来たか』(つかだま書房)をすこし開いて読む。「うろん紀行」でも取り上げられていた牧野信一「ゼーロン」なども言及がある。が、なかなか集中して読めず、『小説− − いかに読み、いかに書くか』などもKindleで開いてみるが、悶々としている。連休後半は「本屋に行く」を書く予定だが、どういう内容で書こうかまだ決まらない。決まらないので風呂に入る。

5月5日(火)

 朝から「本屋に行く」のメモを書き、面白くなるかどうか不安なまま腹を決めて書き始める。いつもとは書き方を変えて、今回は原稿用紙に万年筆で書いてみる。調べながら書き出してみると自分でも面白くなってきて、5枚ほど書いた。

 夜、鯛などの漬け丼にして、味噌汁はカボチャ、カブ、椎茸とすき焼きで残った焼き豆腐。

 何か面白いものを読みたいというフラストレーションがあり、最近パラパラと眺めている国語便覧で可笑しな紹介をされていた中島敦「名人伝」を読む。

5月6日(水)

 朝から再び「本屋に行く」を書き足し、午後までかかって10枚ほどに。電車に乗らず、人にも会わずに三茶まで散歩に行くと、雨が途中から降ってきた。帰宅後、一休みして、「自分は手書き原稿を入力する係なんだ」と暗示を掛け無心になって原稿を入力する。夕飯は帰りに、ステラでテイクアウトしたのを温めて食べる。汁ものは玉ねぎ、人参、トマト、セロリなどのスープ。風呂で芥川龍之介「鼻」を読んだ。

5月7日(木)

 長かった休みも今日までということになり、明日のことを想像すると気分が塞ぐ。朝起きて、午前中は『パリ警視庁未解決捜査』の続きをすこし読む。午後は「本屋に行く」を直して、手紙を書く。夕方、文房具や文芸誌を買い求めて、スーパーで買い出しをして帰宅、「本屋に行く」を書き上げて、気持ちよくビールを飲む。カボチャとほうれん草、油揚げの味噌汁。

 うんうん唸った方がいいこともあれば、さらさらっと書いたものがいいこともある。

5月8日(金)

 仕事の前にすこし読書と散歩をしてから始業。夕方はひさびさの仕事でだいぶ疲れていた。存在しない雑誌の表紙をインデでレイアウトしたらめっぽう楽しく、ずーっとInDesignを触っていられそうだった。

 夜、ビールを飲みながら、本を読んだり、書店員さんに無償で本を紹介する文章を依頼する人たちについてツイートを見かけて、思うところをつぶやく。よくない慣習は積極的に破壊していきたい。

 味噌汁はカボチャと白菜と豆腐。味噌汁にはもっぱら絹ごし豆腐を入れている。つるっとした食感が好きだからだ。

5月9日(土)

 朝、『パリ警視庁未解決捜査』を読み終え、群像6月号の多和田葉子特集を読む。

「わたしは笑えない状態が続くと脳がかたくなって、柔軟な考えかたができなくなってしまうんです。人と話している時も、たとえそれが深刻な話題でも、冗談を言って笑える心の状態で話したいですね」(「群像」2020年6月号 多和田葉子インタビュー p.183)

 それから、メールを返し、整体してもらいに行く。元気になったところで、帰りにマクドナルドでビックマックなどを買って帰り、家でビールとビックマックを食べる。体が不健康、不健全さを求めている。

 「うろん紀行」第10回を公開して告知し、日記を直したりするうちに夜遅くなる。みそ汁は昨日の再放送。

 編集方針が大きく変わったと聞いた「暮らしの手帖」をようやく手に取る。白岩玄のエッセーでマンションの下の階の人からきた騒音の苦情の話を読み、東京に出てきたときにやはりアパートの下の階の人がとつぜんやってきたことを思い出した。あれはちょっと怖かった。またいつかどこかでこの話を書こう。

5月10日(日)

 日記を更新し、海響1号に掲載していただく広告図案を作成していた。合間合間に芥川龍之介「芋粥」「羅生門」などを読み、速記について調べていた。「羅生門」の

しかしこの「すれば」は、いつまでたっても、結局「すれば」であった。下人は、手段を選ばないという事を肯定しながらも、この「すれば」のかたをつけるために(以下略)

という文章はめちゃめちゃ好きな文章ではないか。

 夜遅くに、残っていた麺で焼うどん。みそ汁はカブとしめじと豆腐。


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著者紹介:友田とん(ともだ・とん)京都府生まれ。可笑しさで世界をすこしだけ拡げるひとり出版レーベル・代わりに読む人 代表。著書に『『百年の孤独』を代わりに読む』『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 1』(代わりに読む人)。