新・しるもの日記(2) 友田とん

2020年4月6日〜4月12日

4月6日(月)

 私は在宅で仕事もできるし、それほど受けていないつもりでいても、やはりそれ相応にダメージは受けているもので、ついニュースやSNSにかじりついていて、さて本を読もうと戻ってみても、心がざわついて本に集中できない。

 けれど、ではすべての本がダメかというとそういうことはなく、ひょっとしてと思い立って、以前に友人が丸谷才一の「横しぐれ」がとてもよいと言っていたのを思い出して読んでみた。父が友人と連れ立って四国を旅した時に茶店で遭遇したのは山頭火ではなかったか。その仮説を立証しようと、記憶や証言、山頭火の歌集や日記を手応えを感じながらたどっていくうちに「私」が探り当てようとしていたのとはまったくちがうものを掘り当ててしまう。これがべらぼうに面白く、ページをくる手が止まらなくなった。一冊に固執せずに色々と手に取ってみて、こんな時になぜかするすると面白く読めてしまう本を見つけるのもいいのかもしれない。

 エノキと玉ねぎと豆腐の味噌汁。エノキを入れるとエノキの出汁が出る。

4月7日(火)

 ようやく頼んでいた本がhontoから届いた。カートに入れたままだった本が一緒に発注されてしまったため、何日も発送までに時間が掛かり、結局最初の方は電子書籍を買い求めて読むことになった。一緒に届いたのは「とんかつDJアゲ太郎」。

 仕事を切り上げて「新潮」を買い求めに駅へ出かけたが、売り切れたとのこと。いつもなら通勤経路のどこかで買えばいいのだけれど、どこで買えばいいものか。「群像」を買って、向かいの八百屋で果物や野菜を買って帰る。

 帰宅後、緊急事態宣言の会見をついつい見てしまい、そしてうーんとなる。この後の予定がありますのでと司会者が終了させて会見の直後に、NHKニュース9に生出演し同じような説明を繰り返しているのを見て、いや質疑をやった方がよかったのではと思ってしまう。

 夜はイライラしていたら遅くなってしまったため、冷凍庫に残っていたミートソースでスパゲティにし、みそ汁の具はカブとエノキと絹ごし豆腐。SNSとある程度距離を置こうと思いながら、なかなか距離を置けないでいる。

4月8日(水)

 随分と前からベーシックインカムに関心があり、何冊かこれまで読んできた。日本ではどうやったら普及できるだろうかと考えていたが、この新型コロナウィルスの感染拡大を食い止めるために、人々に自宅にとどまってもらい、代わりに全員に一律のお金を配る。ベーシックインカムの社会実験でこれまでに得られた知見が役立つのではないか。思い出して本棚からベーシックインカムの本を何冊か取り出してみる。『みんなにお金を配ったら』(みすず書房)など。ベーシックインカムに関する様々な懸念に対する答えは実験を通じてある程度明らかになっているようだ。

 玉ねぎとトマトと豆腐のみそ汁。トマトを入れると酸味とコクが増しいつものみそ汁がちょっと違った味になる。

「二人とも外食でしてね、外食券食堂はアパートの近くと駅のそばと二つあつて、駅に近いほうは味噌汁がすこし濃いめなかはり、便所がなかつた。をかしなことを覚えてるもんですね。」(丸谷才一「だらだら坂」)

「それとも何か召しあがりますか? 味噌汁でも。今日の実は豆腐ですが」(丸谷才一「中年」)

 みそ汁は具ではなく、実なのか。読んだ本でみそ汁が出てきたら、都度書き写していこうと思う、気が向けば。

4月9日(木)

 組織のトップの人が思いつきで言ったアイデアにまずいことがあるのは仕方ないとして、「それはちょっとおかしいですよ」と言う身近な人がいないことが大きな問題としてある。ムカムカしていたら遅くなってしまい、駅前に出ようとしたら、雨がポツポツと降り出して、傘をさして本屋さんに行く。本を見ているうちにざーっと雨が降り出して、おかげで誰もいない店内でじっくり本を見ることができた。

 スーパーに行って安くなった刺身とビールを買い求める。怒りで野菜を切り刻み、ネギ、ナス、さつまいもと豆腐のみそ汁をつくる。みそ汁を飲むと、ちょっと元気が出てきた。勢いで、さらに大根と豚肉の煮物も作った。これは明日以降のおかずです。

4月10日(金)

 仕事を終えてから、代わりに読む人で開発しているアプリをいじってコーディングを続け、一つ機能を追加した。

 夜は作り置いた大根の煮物と、キャベツと豆腐とさつまいものみそ汁。

 読書会の課題図書、デニス・ジョンソン『海の乙女の惜しみなさ』のつづきを読む。頭がざわついてなかなか本に入り込めず。

4月11日(土)

 午前中、読書会に向けて黙々と本を読むが、家事だけが着実に進んでいく。午後は読書会。時間が近づいたのでコーヒーを入れて席につき参加する。途中、音が途切れ途切れだったり、特定の人の声が聞こえなかったりしたが、友人が本についていろいろ話すのを聴くのはとてもよかった。

 夜はわかしょ文庫さんの連載「うろん紀行」第9回を公開してから、夕飯を買いに駅前に。駅前の恭文堂書店に立ち寄ったら「新潮」5月号が再入荷していたので、即買って帰る。夕飯はスタンド・バインミーで買い求めたココナッツカレーなどを食べたら、いつもより炭水化物を大量に摂取したため、猛烈に睡魔が襲い、朝までそのまま眠ってしまった。

4月12日(日)

 仕切り直しで再開する「新・しるもの日記」の第1週目のページをつくる。ヘッダ画像の文字は縦書きに今回どうしてもしてみたくて、あれこれやっていた。途中、SUNNY BOY BOOKSに受け取りに行ったり、みそ汁を作って飲んだりした。具は大根と豆腐とわかめ。大根の入るみそ汁は讃岐白味噌を多めに入れて甘くする。京都の白味噌雑煮の雰囲気を出すのが好きだ。それを食べてからさらに日記の最終調整をやっているうちに日が暮れた。

 夜はお好み焼き。冷蔵庫に残っていたキュウリとニンニクをすり下ろしたものに、お酢と醤油をすこし混ぜ、茹でたタコのスライスにまぶす。みそ汁は小松菜と玉ねぎと豆腐。小松菜の匂いが汁に出る。これはこれでうまい。

 何か読書に集中できないなという感じがして、『フォレスト・ガンプ』を観る。

著者紹介:友田とん(ともだ・とん)京都府生まれ。可笑しさで世界をすこしだけ拡げるひとり出版レーベル・代わりに読む人 代表。著書に『『百年の孤独』を代わりに読む』『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 1』(代わりに読む人)。