代わりに読む人の出していく本について
ひとり出版社・代わりに読む人では、次のような本を出版していきます。
(1)可笑しさのある本
人が何かを思いついたり、動き出したりするとき、そこには可笑しさがあるような気がします。もちろん、課題に真剣に取り組む姿勢や喧々諤々の議論も大切です。しかし、冗談一つで閉塞感や窮屈さを吹き飛ばすことができるかもしれません。そこから思わぬ発想が広がることもあります。私自身もそうした可笑しさやユーモアによって息がしやすくなり、そして心を動かされ、いろんなことにチャレンジしてきました。だから、代わりに読む人はどんなときも可笑しい本、ユーモアのある本を出していきます。そして、可笑しさで世界をすこしだけ拡げたいと思っています。
同時に、可笑しさやユーモアがあたりまえに存在するためには、社会に余裕が必要です。人々が余裕を持って暮らしていけるような社会に向けて、努力していきたいと思います。
(2)広い意味での文芸書
これから刊行していく本はどれも広い意味での文芸書です。小説や詩、エッセイであれば文芸ということではないと考えています。常に文芸とはいったい何なのかを問いつづけます。常識では文芸書には見えない分野の本であっても、文芸らしさを感じ取ってもらえるものを生み出していきます。
(3)書くというバトン
本を読んだ結果、書かずにはいられないという状況があります。そうした読んで、書くというリレーのバトンを受け取ってしまった人のリレーを支えたいと思います。広く知られていない優れた書き手を見つけ出し紹介していきます。すでに知られている人の知られていない一面に光を当てたいと思います。
広く読まれてほしい著者の本を着実につくり届け続けていきます。常識からは外れていても、良識的な本を作っていきます。何万部というような大部数を目指しません。千部〜数千部くらいの読者に永く読んでもらえる本を目指します。
「代わりに読む人」とは
きっかけは冗談で思いついた「『百年の孤独』を代わりに読む」という言葉でした。本来、本を人の代わりに読むことはできません。「代わりに読む」という言葉は冗談ですし、ナンセンスです。しかし、その言葉を唱え、考え続け、本を読み続けることで、一冊の本ができ、多くの方に受け入れられました。ナンセンスな問い、原理的に不可能な問い、冗談のような言葉。そうしたものではじめてたどり着ける地点がある、と考えています。こうした可笑しさ、ユーモアを持った本を人々に届けていくために、2018年にひとり出版社 代わりに読む人を立ち上げました。
「代わりに読む」ことは原理的に不可能なことかもしれません。しかし、よく考えてみると、人がそれぞれの選んだ本を読むことで、社会は成り立っている。誰かが私の読まなかった本を代わりに読んでくれているのだと感じる時があります。まさに、社会において一人一人がまぎれもなく代わりに読む人であると言えるのではないでしょうか。そのような意味もこの名前に込めています。
代わりに読む人では、著者、読者、書店、出版者をはじめとした出版に関わるすべての人々の持続可能な活動を目指しています。あらゆる取引や依頼等は適正な条件のもとで行います。身近なところから、よりよい出版活動のありかたを模索していきます。
ロゴマークについて
代わりに読む人のロゴマークはアーティストの佐貫絢郁さんに描いていただいたドローイング作品です。黙々と本を読む人とその傍らに立つ人です。
2021年5月 代表 友田とん
(2024年4月 一部修正)