【内容紹介】代わりに読む人0 創刊準備号

2022年6月に刊行した文芸雑誌『代わりに読む人0 創刊準備号』の各寄稿を紹介しています。全国の書店で好評発売中です。


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特集「準備」

小説家、マンガ家、美術家、数学者、物理学者、会社員、農家、お菓子屋 etc. の「準備」にまつわる小説・エッセイ・マンガを集めました。気になる「準備」を見つけてください。

二見さわや歌|行商日記

「通りかかったおばあちゃんが「何か売ってるの?」と話しかけてくれた。「はい。お菓子屋なんですけど店舗がないので自転車のお店を始めました」」 荷台にお菓子を載せて川の土手や池のほとりで行商した2021年春から夏の記憶を綴る。

陳詩遠|解凍されゆく自身とジュネーブ近郊の地下で起こっている乱痴気騒ぎについて

欧州の素粒子物理学の研究所 CERNで働く若手物理学者が、時間や距離のスケールを跳躍する言葉遣いで、研究の意外な一面や暮らしについて語る。さて、次のフィールドは?

小山田浩子|バカンス

たっつんの田舎の亡くなったおばあさんの家に夏休みにマキちゃんと泊まっていると、近所のおじいさんからもらったとたっつんはジップロック入りのカチカチに凍った猪肉を持ち帰り食べる支度をしてみるが。

伏見瞬|準備の準備のために、あるいはなぜ私が「蓮實重彦論」を書くことになったか

「私が蓮實論を書く理由は、ただひとつ。誰も書いていないからだ」 未だ誰も著していない単著『蓮實重彦論』、その準備と即興の間で揺らぎながら、構想と意気込みを述べる。

田巻秀敏|『貨物船で太平洋を渡る』とそれからのこと

貨物船で太平洋を渡ろう。そう決心し実行に移した著者は、経緯を伝えようと同名の同人誌を製作し、書店へ売り込み、読者に届けていく。着目すべきは著者の”健全”なPDCA。次は何にチャレンジするのか?

オルタナ旧市街|完璧な想像(ポートオーソリティ・バスターミナルで起こったこと)

〈今日はどんなことが起こるかもしれないって想像した?〉 起こりうる未来に過剰に備えるようになった契機は、ニュージャージーのバスターミナルで出会った友人だった。

近藤聡乃|ただ暮らす

お話を考え、文章にし、絵に起こして、ペン入れし、仕上げる。ニューヨークでの暮らしを綴ってきたマンガ「ニューヨークで考え中」の製作で、お話以前の、 マンガを描く「準備」とは?

橋本義武|準備の学として数学

学ぶことで得られるものが何であるかわからないままに、数学の学びははじまる。数学者・グロタディークの紹介を通じ、ある問題のために築かれた理論が、当初の目的をはるかに超えたものの準備であったことが明らかになる。

わかしょ文庫|八ツ柳商事の最終営業日

年末の最終営業日に会社ぐるみの奇妙な〈飲み会〉がひらかれる。それは会社が優良企業であるために欠かせない行事らしいが、毎年惨事が避けられない。幹事を任された新人の田村は周到な準備を行うが……。

柿内正午|会社員の準備

コロナ禍ではじまったリモートワークは公私の境を時間的にも空間的にも溶かしてしまった。それまで習慣としていなかった洗顔という儀式によってこれを回復した著者の議論は、社会性へ、そして近代化へ。

海乃凧|身支度

帰省した地元から東京に戻る日に、長らく会っていない幼馴染みの友人からメールが届いて、かつて友人とキャッチボールをした過去の記憶が蘇ると……。

太田靖久|××××××

あの名前を何と読むのか知りたいと願う私にいかなる「準備」が可能なのだろうか。

佐川恭一|ア・リーン・アンド・イーヴル・モブ・オブ・ムーンカラード・ハウンズの大会

パッとしない日常を送り、運に見放されたかのような「私」に、いよいよ、あの大会が迫る。

鎌田裕樹|オチがない人生のための過不足ない準備

本屋で働く書店員から、農業を働きながら学び、農家として独立する準備をする著者が考える農業のこと、食卓のこと、準備と治療のこと。

毛利悠子|思いつき

「物事を深く考えずに行動するのが好きだった」 インプロヴィゼーション・ミュージックとの出会いから、即興的、有機的につくりあげていく美術の世界へ。ゆかりのない環境での制作にエキサイトしていたが、コロナ禍が状況を一変させる。

友田とん|雑誌の準備、準備としての雑誌

読む/書く人びとの試行錯誤の場、「公園」を目指す雑誌はどのように準備されたのか。理系研究者であった著者が独立し文芸雑誌を編んだ理由、そこに期待すること。

「2021年に読んだ本」

執筆者それぞれが2021年に読んだ本を紹介。マンガ、小説、料理、音楽、歴史、川柳、哲学。実に多彩な本が集まりました。あれを書いた人がこの本を読んだのかと、読みたい本が次々増える小特集。

太田靖久/近藤聡乃/佐川恭一/田巻秀敏/柿内正午/蛙坂須美/小山田浩子/二見さわや歌/オルタナ旧市街/伏見瞬/東條慎生/海乃凧/陳詩遠/鎌田裕樹/わかしょ文庫/haco/コバヤシタケシ/友田とん

連載・小特集「これから読む後藤明生」

生誕90年を迎えた2022年に、小説家・後藤明生を読みはじめます。読むことと書くことは表裏一体であると訴えつづけた後藤明生を、様々な角度から新鮮な視点で書いていただきました。

haco|日常と非日常の境界線

街を歩くのが好きで、日頃から建物や駅を観察して楽しむ著者が、後藤明生の小説「何?」を読み、日常の中に何かを探してみようと、近くの遊歩道や駅への道を歩く。

蛙坂須美|後藤明生と幽霊ーー『雨月物語』『雨月物語紀行』を読む

人が幽霊を必要とするのはなぜか。後藤明生という媒介をとおして上田秋成の怪談とゴーゴリーの喜劇はいかに接続されるのか。悲劇を悲劇のまま終わらせないためには。今読まれるべき論考。

東條慎生|見ることの政治性ーーなぜ後藤明生は政治的に見えないのか?

作品を辿りながら、本人が選んだ脱政治的なスタンス、社会における朝鮮・引揚げの記憶の薄れ、小説の独自の方法論ばかりを評価する偏りを、後藤明生が政治的に見えない理由に挙げ論じる。

友田とん|後藤明生が気になって

正月の食卓で起きた家族の読み間違いと勘違いに端を発した、後藤明生と代表作『挾み撃ち』についての思索は、やがて筆者の記憶を呼び起こす。読むと後藤明生『挾み撃ち』が読みたくなる。

コバヤシタケシ|dessin (1) なまえ

「やってみたいと思ったら、今からやれば良いのでは?」 絵が描きたいという自分の気持ちを尊重して再び描きはじめたデッサンが記憶を呼び起こし思考を起動する。本誌デザインを手掛ける著者のエッセイとデッサン。唯一の持ち込み原稿による連載。