しるもの日記(9)
7月13日(土)〜7月19日(金)

7月13日(土)

朝、残ったみそ汁で体を起こしてから、まずは出荷作業をする。一部重版を待っていただいていたため、そこそこの量がある。黙々と伝票を作る。合間に桃とトーストで遅めの朝食。トーストの上にはこないだ作ったチキンのトマトソース(がラタトゥイユみたいになったもの)とローソンのタマゴサラダを載せたもの。そう言えば、昨年から好んで食べていたセブンイレブンのタマゴサラダが春からずっと品切れしていて、気づいたら売り場にあったスペースもなくなり、完全に姿を消してしまった。あれは何が起こったのだろうか。ローソンのタマゴサラダはセブンイレブンのそれよりも白くてふわふわしている。そうこうしているうちに昼もとっくにすぎ、コンビニでおにぎりを買ってきて食べた。途中、宅急便が購入したスキャナーを届けてくれた。

出荷を済ませてから、今夜のトークイベントに向けて独立系旅雑誌『LOCKET3』を再読する。本のつくりだけでなく、内容も本当に面白い。どうしても聞いてみたかったのは、どうやってこのインドやヨーロッパや奄美を旅する構成(台割)が決まるのか。夕方、SUNNY BOY BOOKSさんに立ち寄って納品してから、田原町へ向かう。夜は『LOCKET』の内田洋介さんとReadin’Writin’ BOOKSTOREでトークイベント。お客さんも10名ほど来てくださりほっと安心する。最初は緊張していて声がなかなか出なかったが、後半版元業務の話になってからは結構話せた気がする。最近、版元と化していて、文章を書いていないからだろうか。本という完成品を作らなければいけないにもかかわらず、予定調和を壊していきたいというところのバランスの話、どうしてLOCKETは直取引なのか、どうしてうちは取次に卸しているのか、消費税増税の影響、採算や値付けの難しさなどいろいろ話した。気づいたら一時間半があっという間に過ぎていた。遠くからも友人が来てくれてとてもうれしかった。

終わってから内田さんと新橋に移動して終電間際まで飲む。本を作ってる仲間が僕には全然いないので、なんかいろいろ話せてよかった。

7月14日(日)

昨晩遅くまで飲んでいて、朝もゆっくり目をさましたら、何人かから『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 1』(パリ闊1)の書評が読売新聞に出ているよという連絡が入っていた。急いで裏のコンビニに行き、読売新聞を3冊買った。帰宅してばっと開くと、あった! 岸本佐知子さんが書評を書いてくださっていた。ありがたい。読んでるだけで涙が出た。新聞をまとめて買った(新聞をまとめて買ったのは初めてかも知れない)。3冊で450円、安い! 価格というものがなんなのかよくわからなくなる。

いただいたういろうを朝食がわりに食べながら(おいしい!)、ツイッターで手に入る書店一覧をつぶやいたり、エゴサしたりしているうちに昼になった。その後、今度からはじまる「読みもの」のゲラを作成して、鉛筆で書き込んで、メールを出す。スキャナーがやっぱり便利だ。これで夜中にコンビニに行ってスキャンする必要もない。いい買い物をした。そうこうするうちに夜になってしまったので、急いで羽田空港に向かった。機内ではボラーニョの『通話』を読んでいた。名作。ぱっとしない作家たちを描くのが本当に上手だと思う。

7月15日(月)

早朝、クアラルンプールに着く。ホテルに荷物を置いてから、朝ごはんにレストランでナシレマを食べた。クアラルンプールにやり残した手続きがあったのだが、ものの一時間ほどで無事に済み、あとはいろいろ食べたいものを食べる。午後はチキンライスを食べに行く。南香 Nam Heong(ナムヒョン)。蓮根のスープがおいしかった。基本はあっさりとした上品な味です。

夕方、タイマッサージをしてもらい、それから仕事終わりの旧友と会い、マレー系の人たちが行くローカルの食事を食べる。揚げた魚を甘酸っぱいあん掛けにしたのがとてもおいしかった。

7月16日(火)

もう一つ、マレーシアに来たらどうしても食べたかったものがあった。それはタピオカの原料であるキャッサバという芋を発酵させて作るタペ(タパイ)という食べものだ。芋なのだが、発酵が進むとふわっふわで、瑞々しく、味も甘酸っぱくなる。ちょっとお酒のようになっていて、芋焼酎みたいな香りがする。スーパーなどでは手に入らず、ローカルのマーケットに行けばあるものらしいのだが、どこで手に入るかわからない。困っていたところ、ホテルのスタッフがいろいろ問い合わせたり調べたりしてくれて、だがやはりどの店にもない。あれこれ話していたところに偶然通りがかった従業員さんが朝出勤するときにどこかから調達してきてくれるという。彼に望みを託し朝、フロントに行くと確かにタペが届いていた。部屋に戻り口に入れる。おいしい。大満足のまま、日本に帰った。

7月17日(水)

夜、紀伊国屋書店に立ち寄ると、地下のガイドブックコーナーに入っていた。渋谷の丸善ジュンク堂にも立ち寄る。帰宅後、出荷の準備と対談の直しをする。あまりに眠たくて、10時半ごろに寝る。

7月18日(木)

朝、早く起きて朗読会の準備のため、『通話』を読み返す。まるごと一編読みたいが、時間的に難しそう。どの部分を切り出して読むか。いろいろ試してどう切り出せば作品の良さを損なわないかと考える。気になった人には自分で全編を読んでほしい。通勤電車で、小説の書き出しを思いつき、一気に書けそうな気がしてくる。これもボラーニョ効果かもしれない。

夜、注文がくる。その他溜まった出荷と伝票を作る。京都の事件の報せにいたたまれない気持ちになる。

7月19日(金)

通勤電車で明日の朗読会のセットリストを考える。夜、遅くなってので駅前の中華にしようかと思っていたが、新宿の乗り換えでふらふらと引き寄せられるようにして、KIRIN CITY。ボラーニョを読みながら。

わかしょ文庫さんのWEB連載「うろん紀行」がはじまりました。ぜひこちらもお読みください。

著者紹介:友田とん(ともだ・とん)京都府生まれ。可笑しさで世界をすこしだけ拡げるひとり出版レーベル・代わりに読む人 代表。著書に『『百年の孤独』を代わりに読む』、『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 1』(代わりに読む人)。