しるもの日記(4)
6月8日(土)〜6月14日(金)

6月8日(土)

西条駅前のホテルで朝食をとり、部屋に戻るとwifiには繋がるが、ネットに繋がらない。いろいろ試したがダメで、素直にフロントに電話したら再起動してくれて繋がるようになった。予定の時間までしるもの日記を直して、友人に迎えに来てもらい、竹原に連れて行ってもらった。

竹原が観光地っぽくスレてなくてとてもいい。旧笠井邸の受付の方が、地図を片手に町の見どころを教えてくれた。
「醤油屋も酒屋もみんなもとは製塩業の「副業」なんです。それからこのお寺は町が一望できますからぜひ登ってくださいね。京都の清水寺の ✳︎✳︎✳︎ ですから」
と言う。なんと言ったのか聞き取れず、こういう時、私は後で友人に聞けばいいかなと適当に頷く癖があり、隣の部屋に移ってから友人に「あれはなんと言ってたの?」と言おうとしたら、友人が「あれはなんと言ってたんですか?」と先に言ったので笑った。「友田さんは頷いてたからわかってるのかと思いました」とも言われた。わからない。たぶん、神社でいうところの分社みたいなものだと思うが。

旧笠井邸には塩田の歴史の展示があり、2階もありますというので、上がってみると、フロアがまるごと大広間になっていた。なっていたのだが、なぜか数人の男性がその大広間の真ん中を陣取って鉄道模型の線路(しかも複々線!)をああでもないこうでもないと言いながら敷設しており、これは夢なのでは!となった。夢ではなかった。友人が何かのイベントなのですかと聞いてみるものの、
「いや、まだこれはどう線路を引くか考えてるとこですわ。なかなか」
というような答えで要領を得ず、苦笑しながら下に降りると、「大阪や東京からやってきてここでもう何年も前から毎年模型を走らせてるんですよ」と受付の女性が言う。ただ、その口ぶりがどうも他人事で、走らせていることはわかるが、なぜここで今なのかその理由がよくわからない。もう少し模型の敷設作業が進めば事情がわかるかもしれず、散策したあと様子を見に来ようと友人と話した。町をぐるっとまわって喫茶店で休息し、戻ってきたら屋敷は締まっていた。

夜、西条に戻り、ほかの家族づれの友人も東京や大阪から集まって食事会。たのしく過ごす。ひとが集まるのに、なぜここで、もなぜ今も関係ないのだと気づく。ここでたしかカワハギの刺身をしたあとの骨や身をみそ汁にしたのを飲んだ。うまかった。

6月9日(日)

朝、しるもの日記を更新してから、広島に出る。駅前のジュンク堂書店にご挨拶し、さらに八丁堀の丸善に立ち寄る。国内紀行の棚に面陳していただいた。担当の方が「ポップとかお持ちですか?」と訊かれたので、「ポップ書きます」と言ったら、キョトンとされた。「なぜなら、私は版元で、なおかつ著者だからです」というと、更に驚かれた。こんなに無名の版元兼著者にも丁寧に対応いただけて、大変ありがたい。出版流通の問題点とかはあるのだろうけれど、私自身は今最大限この出版流通のプラットフォームの恩恵を受けている。なんとか、このスモールスタートした出版者が全国に本を届けられる仕組みを残すことができたらいいと思う。

READAN DEATさんに立ち寄り、nakabanさんの原画展を見て、そこから広島の港へ行き、松山に渡る。船を待つ間にパン屋さんでパンを食べる。パンがおいしい、高速船はたのしい。広島も松山も、路面電車のある街はいいな、この規模感と考えながら、ホテルに荷物を置いて、松山市駅ちかくにある本の轍さんにうかがった。

本の轍さんは急遽お店を開けてくださり、それによって訪問が叶った。お店を営まれているお二人にご挨拶して、何冊かサイン本をつくらせていただいて、ちょうどそこにいらっしゃったお客さんが「デイリーポータルZみたいですね」と言いながら買ってくださった。地図の切り絵作家のaikautauさんもいらっしゃり、お話を聞かせていただいた。

夜は道後温泉に行き汗を流してから道後ビールを飲む。こないだから『重力の虹』を読んでいたため、道後ビールのグラスがV2ロケットにしか見えない。しるものは飲んでいないが、じゃこカツがおいしかった。明日の朝は早い。

6月10日((月))

早朝の飛行機で羽田に飛ぶ。そのまま、歯医者に行き、帰りにバスを待つ。冷たい雨が吹き込んできて、しかもバスがなかなか来ない。家に帰ってきて、冷えた体を残り物の味噌汁を温めて飲み、温める。雨が冷たく、部屋も寒い。六月だというのに、カーペットの電気を入れて、伝票整理などをする。発送の準備もする。メールも返す。そうして一日が過ぎていった。

6月11日(火)

通勤と昼休みに本を読む。明日のトークイベントに向けて夜はとん活と思い、目当てで行った四谷のとんかつ屋がなんと今夜は貸切で、ショックのあまりとんかつ屋を貸し切るなよーと思うが、それは仕方ない。もう次を探す気力もなかったが、なんとか探して別の街の別のとんかつ屋へ向かう。一口食べたら脂身が美味しかったのだが、食べすぎて胸焼けする。夜中まで満腹で苦しいまま眠った。

6月12日(水)

朝、まだ胸焼けしている。「まだ胸焼けしている。トークイベントなのに!」と思う。だが、昼ごろには回復した。仕事から帰ってきて、着替えて荷物をまとめて、赤坂に向かう。駅前のドトールで休んでから駅に向かったところで、サインに使うスタンプとかを忘れていることに気づき、時間に余裕がないのでタクシーで駅と家を往復する。

焦りつつ、なんとか開始時刻までに双子のライオン堂に到着する。十五人ほどのお客さんがいらっしゃっていて、部屋が満席になっていて緊張して水をがぶ飲みする。HABの松井さんの安心感と巧みな質問により、(私の拙い説明も多々あったのだけれど)あれこれお話できたような気がする。私も笑ったが、お客さんも笑ってもらえたような気がする。なんとなく自主制作出版も行商も出版レーベルも場当たりでやっているようにも思うのだけれど、可笑しな本をつくって、読者に届けつづけたいというところはまったくブレていなくて、それの実現方法で大量のトライ&エラーを繰り返した結果がこれなんだと思う。逆に、事前に計画を細かく立ててからステップを踏んでやっていくというのには、正直もう仕事で飽きている。一人でやっていることのメリットはこういうトライ&エラーを大量に繰り返せることだと思うので、トライ&エラーを大量に繰り返すという一貫性を大事にしたい。

6月13日(木)

夜、Tシャツの枚数かぞえなくちゃ、メール書かなくちゃ、伝票を、、、と思っているうちに眠ってしまった。

6月14日(金)

今日は仕事が休みなので、家で朝荷物を待つ。Tシャツの重版(2刷)が届いた。Tシャツに「2刷」と銘打った人は未だかつていないのではないか! 素晴らしい出来栄え。支度して、Tシャツや本は宅急便で送らせてもらって、急いで品川へ向かう。新幹線で大阪へ。車中は、チャーハンとシウマイの弁当を食べる。チャーハンを食べると眠くなる。コーヒーを飲みながら、toi booksさんでのイベント「代わりに読む人 全点フェア(※全1点)」の記念冊子(笑)の原稿を直す。

大阪の前にまず京都で降り河原町に行き、丸善を訪ねる。そこから阪急で大阪に行き、梅田、難波、あべの橋と、代わりに読む人の本を入れていただいている本屋さんを計6軒ほどまわる。いくつかの書店さんではPOPを送りますねと約束し、本の動き具合とかいろいろ教えてもらい、学びの多い一日だった。あべの橋でお好み焼きを食べて、投宿。宿で温泉に浸かって寝る。