しるもの日記(3)
6月1日(土)〜6月7日(金)

6月1日(土)

 朝、3ヶ月ぶりに髪を切ってもらいに行き、それからドトールでコーヒーとトーストで朝食の後、整体をしてもらいに行く。体が楽になったところで、渋谷のMARUZEN&ジュンク堂書店に行くと、友田とん『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 1』(代わりに読む人)が文芸 サブカル・エッセーの棚に面陳いただいていた。担当者さんにご挨拶し、結果的にポップまで書かせてもらった。たくさんの人の手に取られますように。『『百年の孤独』を代わりに読む』のころからご存知いただいていたとのこと。ちゃんと出版者になって流通させてよかった。無秩序に売れればいいとは思っていないし、何万人もの人に受け入れられるとも思っていない。ただ、読む可能性のある人の目に触れたい、手に取る機会をなるだけ作りたいという気持ちはある。そのための労力を惜しまない。

 昼食を取ってから、夕方、『アメリカン・アニマルズ』を観た。大学図書館に収蔵されている貴重書を大学生の四人が老人に変装して強奪しようとする。彼らはその強奪のために、なぜか『オーシャンズ11』などの強盗映画を参考に計画を練る。そこがおもしろい。杜撰さ。あと音楽が心地よい。

ヒューマントラストシネマのエスカレータを降りるときに、建設中の宮下公園を見た。視界を遮る鉄骨の塊。渋谷の街を一体どうしようというのか?

帰りに渋谷でパンを買う。明治通りのビックカメラの向かいの角にあるパン屋さんが、以前はなんとかというフランスのパン職人の名前のパン屋さんだったが、名前が思い出せず、行きしからずっと考えていた。新しい名前はブーランジェで、これはまたそのまんまの名前をつけたなと思ったが、Angelと掛けているらしい。前のパン屋の名前を思い出そうとする。

「なんたら、かんたら」

うーん、これではさすがに思い出せない。いや、でも頭の中で名前が聴こえる気がして、必死に考える。あとすこし、もうすこしで思い出せそう。そうだ!

「なんたらんたん・なんたら」

みたいな感じだ。そうそう、まさに「ゴントラン・シェリエ」!。これで思い出せる自分の頭の構造がどうなってるのか心配になる。「なんたら」でなんで思い出せるのか。「なんたら」ってそもそもなんなんだ。なんたらの力がすごい。南無阿弥陀仏を唱えさえすれば極楽浄土に行けるみたいなものだろうか。

お昼が遅かったので、夕飯は軽く。あまっていたキャベツなどを使って味噌汁。糖度の高いトマトが甘い。めんつゆで煮たピーマンがうまい。さつま揚げを焼いて刻んだネギと醤油をぶっかける。

6月2日(日)

朝、渋谷の明治通りの交差点の角にあるパン屋で買ったパンを食べ、それから「しるもの日記」の第1回を公開し、取扱書店の一覧を更新した。それから、たまった注文の出荷作業をして、そしてこれもまたたまった伝票を入力して、そしたらもう3時前だったので、昨晩の残り物で昼食をとる。

夕方、SUNNY BOY BOOKSさんに納品に行ったら、ちょうど目の前で私の本が手に取られ、読まれているところだった。知らないふりをする。結構読んでくれていた。うれしい。黙って感謝する。帰りにドトールでしるもの日記を書き、『パリ闊1』を読み返す。

夜はお好み焼き。茄子のめんつゆ煮、汁物はカブとえのきの味噌汁。

6月3日(月)

ちゃんと『重力の虹』を読み進めないと反省する。今日も仮説の正しさを示された。みそ汁の具はごぼう。

6月4日(火)

朝、起きてからしばらく『重力の虹』を読んで会社へ向かう。昼休みの電気の消えたオフィスで、窓から漏れ入る微かな日の光を頼りに少しだけ読む。空から飛来するV2ロケット、白い光が見える、という件を読んでいる。給湯室でカップみそ汁に湯を注いで飲む。

6月5日(水)

朝夕の通勤電車では『重力の虹』がぼちぼち進む。帰りに早春書店さんにようやく訪問できた。古本の音楽の棚が背をだーっと見て行くだけで、おおおっとなるたのしいものだった。新刊棚も最近気になっている本が並んでおり(代わりに読む人の新刊『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する 1』もありました)、迷った挙句、橋本倫史さんの『市場界隈』を購入した。店主さんとやりたいことについてお話して、『『百年の孤独』を代わりに読む』を今度持ってくることになった。夕飯は天やで天丼。しるものはみそ汁。

6月6日(木)

仕事帰りに近くの平田印刷さんに立ち寄り、頼んであったTシャツの下げ札を受け取る。活版印刷だけれど、活版です!という凸凹の主張があまり好きではなくて、あえて凸凹させない控えめの印刷をお願いしていて、仕上がりを確認して、やはりいいと思った。今回は増刷なので、下げ札にはナンバリングではなく「2刷」と印刷した。Tシャツに2刷って書いてあるのは見たことがない。平田さんも「Tシャツに2刷って書くなんて、凝ってますよね」と仰っていた。まあ、自分でもどうかしていると思うが、その変さを楽しんでいる。楽しんでほしい。サイズを記入して、Tシャツの加工メーカーに急いで送る。カレーとカブのみそ汁。

6月7日(金)

仕事終わりにそのまま羽田空港に向かう。機内でしるもの日記を推敲する。広島空港に着くとすぐにバスに乗り、さらに山陽本線で西条に。10年以上ぶりに来てみると、駅が新しくなり、立派になったと思った。駅前のセブンの前にはヤンキーがいた。宿に着くとすぐに寝た。本はあまり読んでいない。

(つづく)