しるもの日記(2)
5月25日(土)〜5月31日(金)

5月25日(土)

朝、味噌汁を飲んでから皮膚科に行き、それから歯医者さんに行く。名前や書名に細心の注意を払うことの大切さをあらためて実感する。iPhoneの充電のため一度家に帰って、代官山蔦屋書店へ行く。土曜の代官山はすごい人だ。早めについて、合流したかとうさん、UNIさんとanjinで軽く食事をし、つい今月頭にあった文フリ以来数ヶ月ぶりに会ったみたいですよねと最近の話をやりとりしてから、岸本佐知子さんのトークイベントを聴く。ここは椅子がやらかいので助かる。店員さんから事前に紙に書いて出すように言われた質問に次々と答えてもらうのがよかった。つい挙手だと、「さすがにこれはくだらなすぎる〜」と自分でも躊躇われるような質問も書けるし、でもそういう些細な質問の積み重ねが模範的な質問では照らさない一面を露わにし、案外盛り上がったりする。サイン会でサインしてもらって、私もサインするという予想外の展開が待ち受けていた。帰りにかとうさん、UNIさんと3人でカフェでお茶してよかったよねと言い合い、帰った。

5月26日(日)

朝、起き出すと直ちにしるもの日記を書き足して推敲する。昼は出荷や手紙を書いて送り、夕方、ドトールに行って、webをいじって「しるもの日記」のページを作ってから、夏のイベントの企画書を書く。夜、 SUNNY BOY BOOKSに行って、高橋さんと長話をする。なんだか小説を一つ読んだような、心地よい疲労感が訪れる。

一部の写真がウィンドウからはみ出すので、cssをいじっているのだけれど、全然解決せず、うまくいっているところとそうでないところで、何が悪いのかわからないので、帰宅してからもしばらくwebをいじっていた。すべてのリソースをリロードしてみたら、問題はすでに解決していた。随分と遅くなったので、お好み焼きを焼きながら、冷奴でビールを飲み、汁ものは大根と油揚げの味噌汁だった。

5月27日(月)

昼休みに方々と電話でやりとりする。社食で席に着き味噌汁を一口すするとごぼうの香りがした。箸で掬うとやはりごぼうのささがきが汁面から顔を見せた。春から社食が新しくなり、そして月曜の味噌汁は具が決まってごぼうである、ような気が連休前からしていた。だから私はそのような仮説を立てた。そして、今日もごぼうであり、やはりと私は思った。が、今日はそこにキャベツも入っていた。主がごぼうで、副がキャベツなのか、それとも徐々に今後キャベツになっていく前兆なのか。わからない。つい、法則性を見つけようとしてしまう。

昼休みは秋田麻早子『絵を見る技術』(朝日出版社)を読んでいる。絵のことはさっぱりわかってないので、こうして説明してもらえるとありがたい。これまで漫然と観ていた。フォーカルポイント、リーディングライン、なるほど。数学の証明や反例を作ったりする場面にも通ずるなと思った。そして、これの応用を小説でもできないだろうかと考える。

5月28日(火)

神田で乗り換える時には、もう京浜東北線の快速運転は終わっていて、山手線で行っても、京浜東北線で行っても構わない。なんなら、京浜東北線の方が微妙に所要時間が長かったのではないかなどと考えて、山手線で行く。品川の手前で、窓の向こうを眺めていると、線路だけが並んだ見通しのよいところに新しく出来るという高輪ゲートウェイ駅が見え、そしてさっき乗るかどうか迷った京浜東北線の電車がその中をすーっと通り抜けていくのが並走しているこちら側からも見えた。ああ、あっち乗ればよかったか。一瞬そう思ったが、遠くから見ていたからそう思うのであって、あの電車に乗っていたらそうは思わなかっただろう。品川に着いた。

とある日記をまとめた本を読んでいて、その人には何度かお会いしただけで、実際会った時にはどのような人なのか、少なくとも書く人だとは知らず、ただその人のその時の役割と接しているような気がしていたが、日記を読んだ後では、ぐっと厚みが増す。その人にも人ひとりぶんの厚みがある、という当然のことを思う。何かに一喜一憂したり、映画や小説や演劇に心を動かされたりという当然の人ひとりぶんの厚みがそこにあることを私はつい忘れがちだ。

帰りので電車でメールを開くと、客注のメールが届いていた。大学時代の先輩が東京に転勤で戻ってきたので、目黒でとん活する。ビールを飲み、とんかつを食べ、そしてスタバでコーヒーを飲む。ふたりで人生について考える。目黒のとんきは火曜日が定休日だねという結論に至る。

汁ものは、とんかつ屋の味噌汁。ついとんかつに気を取られて写真を忘れがちである。

5月29日(水)

昼休み、出張先の電気の消えたフロアで、おにぎりとカップ味噌汁にお湯を注いで食べる。夜遅くに地元の駅前でユリイカの臨時増刊号「書店の未来」を買った。代わりに読むオリジナルTシャツの増刷の件は、商品タグ(下げ札というらしい)の活版印刷も、Tシャツのプリントも、下げ札の持ち込み加工の課題もだいたいクリアした。納期がわかったら、明日あたりに告知できそうだ。ちょうどTシャツのシーズンだし、いろんな人にこのTシャツを着てほしいと思う。色やサイズのバリエーションを作ったこともあるし、下げ札(というらしい)を活版印刷で印刷し、取り外すと栞になるというところにもこだわった。前回、丸一日がかりで作業することになった下げ札付けと袋詰めは、今回工場に持ち込んで、加工してもらう予定。こだわった結果、結構原価が掛かっていて、2刷は少し値上げしないと無理かもしれないというところで、繰り返しても何も変わらないが、電卓を繰り返し叩く。

5月30日(木)

帰りの電車で、Tシャツ増刷決定の告知をする。7月のイベントの調整もうまくいき、もう少ししたら告知がはじまる。汁ものは大根と油揚げの味噌汁の残り。

5月31日(金)

朝の電車で、こないだから文章が頭に入ってこなかった『重力の虹』のあるセクションが読むと自然に映像が浮かぶ。あるいは語られている人物(ロジャー・メキシコとジェシカ)の気持ちがなんだか理解できる。ひょっとしてこの調子で以降読み進められるのかもと思っていると、急に難しくなったりする。『重力の虹』はなんかそういうところがある。思索めいたことがあると、そこはひょっとしたらピンチョンの声なのだろうか。

帰ろうとしたところで問題が発生して帰りが遅くなってしまったので、今夜も早春書店さんには立ち寄れず。というよりも、家の近くまで帰ってきたら10時近かったので、サイゼリアで夕食をとる。そして、帰宅してからコーヒーをいれて、1時間ほど本を読もうと思っていたが、電気ケトルのスイッチを入れたところで、そのままベッドで眠ってしまった。

(つづく)