しるもの日記(1)
5月18日(土)〜5月24日(金)

5月18日(土)

 昨晩は疲れており「重力に叱られる〜」と思いながらも気づけば眠っていた。6時に起きて、『重力の虹』を読みはじめる。再読とは言え、どれだけ急いでも、個人の読書の速度というのはある程度一定であるため、到底終わりにはたどり着かない。せめて、第一部だけでもと思いながらも、第一部の終わりすらたどり着かない。たどり着かないまま、読書会の会場に向かった。

 汁もの日記だから、その日口にした汁ものについて述べる。あとはおまけである。はて、今日は汁ものを口にしただろうか。二次会で豆腐料理の店で、豆腐料理をたらふく食べた。重たくないのに、すごい満腹感で、とてもよい。『重力の虹』読書会は終わったけれど、やっぱりピンチョンはおもしろいなという実感を得たので、ちゃんと最後まで読み通そうと思った。汁ものはたぶん食べたはずだが、初日から早速思い出せない。

5月19日(日)

 ピンチョン読書会から開けて日曜日。部屋の掃除をして、少しピンチョンを読んでから、午後西武新宿線上井草駅近くにあるちひろ美術館へ行く。行きの電車で何かを思いつき、そして忘れる(*)。小さい油絵があり、東京のホテルの廊下だったり、カリフォルニアの通りの風景だったりがベタッと色が塗られているのにまるで写真のように見える。ショーン・タンの能力の多彩さに驚かされる。熊が法衣を纏った女性と並んで階段を登っていく様子が描かれた絵がずっと忘れられない。展示を見ている途中であまりに空腹になり、おやきと塩麹の野菜スープを食べる。これがめっぽうおいしく、体に染み込んできた。その後、残りの展示を見た。夜、塩麹の野菜スープを早速つくってみた。

 *翌日思い出した。「よい本は置いておく、粗悪な本は処分できる。でも、変な本は処分できない。」 だが、よい本とは一体?

5月20日(月)

 行き帰りの電車は黙々と『重力の虹』を読んでいる。新刊のことも少し落ち着いて、本を読む余裕が出てきた。松井さんからH.A.Bノ冊子第2号完成の知らせが届いた。追加注文があり『『百年の孤独』を代わりに読む』2版の在庫がほぼ底をついた。もう少しいろんな人の手に取ってもらいたいという思いがある一方で、それなりに動きも落ち着いているし、重版するかどうかとても迷っている。たまに訪れる「酢飯が食べたい」衝動が今夜も帰りの電車で突然やってきて、駅に着くなりスーパーで助六寿司を買い、汁ものはカブの味噌汁をつくった。

5月21日(火)

 社内講演会の後、少しだけ懇親して、吉祥寺UPLINKに向かう。20時半からの回だったので、すこしだけ時間があり、ジュンク堂書店に立ち寄ると、平台の『パリ闊』が残り2冊になっていた。うれしい。『愛がなんだ』を観るだけなら、新宿でもよかったが、こないだ知ったクラフトコーラ「伊良コーラ」がここで飲めると教えてもらい、だったら去年からずっと楽しみにしていた『愛がなんだ』とクラフトコーラのコンボだ、どうだ!と思って劇場に着いたら、Sold outだった。なので、今夜は汁ものはなし。映画で繰り返される食事が印象的だった。一緒に食事したり、振り回したり、振り回された人のことを僕も思い出したが、劇中の彼らもまたあの場で振り回したり、振り回されたりするだけでなく、それによって過去の振り回したり、振り回されたことを思ったりしている。

「私に今できることは、スパゲッティを作ることだけだ!」とスミレさんが立ち上がった瞬間に、ひとりの観客が立ち上がり、そして帰っていった。あれはなんだったんだろう。

5月22日(水)

 終日とにかくモヤモヤしていた。うれしい知らせもあり、帰って甘いものを食べて、気持ちを切り替えることにする。汁ものは一昨日つくったカブの味噌汁のつづき。

5月23日(木)

 明日朝急にラジオに出ることになり、出張帰りにH.A.Bookstoreに行って、H.A.Bノ冊子の第2号を受け取る。分厚い。H.A.Bノ冊子第2号を折りつづける松井さんと一時間ほど立ち話。遅くなったので帰りに駅前の中華でタンメンと半餃子。食べていると、「大将、風邪で具合悪いんだって?」と言いながら続々と客が入ってくるため、「お客さんが引いたら、早じまいしようと思って」と大将は繰りかえし言うものの、店は閉められずいつも以上に賑わっていた。

5月24日(金)

 今朝は渋谷のラジオ「渋谷の本屋さん」に呼んでもらい、お話したのだが、自分の本を自分で紹介するのってとても難しいことだと思う。むしろ、自分が読んで、とてもよかった本を紹介する方がいい。どこがよかったのか、どうしてよかったのか。仕事帰りに渋谷のMARUZEN&ジュンク堂で知り合いと立ち話する。帰ってから、冷奴でビールを飲み、その後、生姜焼きとご飯と味噌汁。本は読んでいない。

(つづく)